【札幌教材製作所】北海道で唯一の「黒板屋」さん
2023年7月14日にエレメントの講座「あなヒラ北海道」が開催されました。
今回のゲストは「株式会社札幌教材製作所」の代表・上田 邦秀(うえだ くにひで)社長。大学卒業後は営業マンとして全国を飛び回っていましたが、故郷の札幌に戻ってからは、先代(父)のもとで黒板について学びを深めていきます。
札幌教材さんを象徴する製品といえば、なんといっても「黒板」です。
昔は日本中にたくさんあった黒板屋さんですが、いまでは全国に指で数えるくらいしか生き残っていません。札幌教材さんは北海道唯一の黒板屋さんとして知られ、黒板の制作や修理で道内を奔走しています。
現在では、学校用黒板だけでなく、工事用黒板・おしゃれ黒板・ビューボードといった製品をオンラインショップで展開し、市場の拡大に取り組んでいるそうです。
8万台のベストセラー「工事用撮影黒板」の誕生エピソードと開発秘話。
1972年の創業以来、札幌教材さんは、時代の流れを汲み取りながら、変化する顧客ニーズに対応した製品を提供してきました。
今回の講座のメインは、工事現場で働く人たちのために生み出したヒット製品「工事用撮影黒板」の誕生エピソードでした。
「工事現場で使う人の気持ちになって考えていたら、アイデアがかたちになった」
と語る上田社長。「顧客志向の発想」こそ、マーケティングの真髄です。工事用撮影黒板は、まさにマーケティングが生み出した素晴らしい製品だといえるでしょう。
工事用撮影黒板の開発から製品化までの道のりは、決して前途洋々ではありませんでした。そのために上田社長が、どのような意思決定を行い、決断してきたのか。普通ではなかなか聞けない製品開発の裏側を、包み隠さず話してくれました。
「チャンスを逃さない実行力が大事。やると決めたら、あとはやってやってやり抜くのみ」
と話す上田社長。経営者の圧倒的な熱量に、起業を志す北大生はとてもいい刺激を受けたことでしょう。
打つ手は無限!DX化の時代の先にある黒板の未来。
さて、工事用撮影黒板はベストセラーとなり、一時はテレビでも取り上げられるほど話題となりましたが、時代の変化は、上田社長に新たな決断を迫ることになります。
というのも、工事用撮影黒板は、工事現場のDX化の影響で、次第に需要が減りつつあったからです。現在、多くの工事現場で、「スマホで撮影するだけで工事用撮影黒板と同じ役割を果たすアプリ」が導入され始めているといいます。その流れを受けて、やはり工事用撮影黒板の売れ行きも影響を受けました。
ここで上田社長は、あらためて原点に立ち返り、「黒板とは何か」について考えを深めていきます。
いまでは日本で数えるくらいしかない黒板屋ができることとは?どんな顧客に、どんな価値を届けていくべきなのか?
「デジタル教育が主流になり、昔とくらべて、黒板にガシガシと字を書く機会が減っていますけれども、興味深いのは、学校の先生たちが、書くことの大切さを誰よりも実感しているということです」
そう語る上田社長がいま挑戦しているのは、一見すると従来の黒板とは相反する「ICT教育」分野でした。
ICT教育とは、「Information and Communication Technology」(情報通信技術)の略で、広義には、アナログな教育システムをデジタル化することを指します。
黒板とICT教育の融合。いわゆる「電子黒板」です。あるメーカーが、スライド投影が綺麗に映る黒板を開発しており、札幌教材さんは、そのメーカーと提携して、新しい市場を開拓しようと試みています。
参加者からの積極的な質疑が飛び交う。講座はますますヒートアップ!
上田社長の話が終わると、間を置かず、参加者全員による質疑応答タイムに。ここからいよいよ、あなヒラ北海道の本領発揮です!
マネジメントの父ことピーター・ドラッカーに精通した人からは、マーケティングに関する鋭い質問が。
起業を志す北大生たちからは、「意思決定を実行するにはどうすればいいのか」「そのときはどんな想いでいたか」など、現役経営者の生の声をぜひ聞かせてくれと言わんばかりのアツイ質問が次から次に飛んできました。
あなヒラ北海道を主催する私たちエレメント陣営からは、既存の製品ラインナップを起点に、まだ開拓しきれていない可能性のある市場について提案させていただきました。
エレメントの提案のなかでも「飲食店で使うおしゃれ黒板ボードは、そもそも上手な黒板アートの書き方を知らない人がいるせいで、購入をしぶっている人も多いのでは。黒板アート初心者の悩みを解消するサービスも込みなら、黒板ボードの潜在需要を満たせるかもしれない」は、上田社長からも好評をいただきました。
また、エレメントはコンテンツマーケティングを得意としているため、「もしも札幌教材さんがブログコンテンツを発信していくなら、この検索キーワードで1位をとりたい」という提案も行いました。
「質疑応答ではやや緊張しましたが、いろんな人のいろんな考え方があったので、とても新鮮でした」
と上田社長。
講座では知れなかった上田社長の人となりも。懇親会で学びがもっと深まる!
白熱した講座を終えると、次は懇親会へ。シャキッとした講座の雰囲気とは一転、懇親会では、上田社長を囲んで、お酒を飲みながら、くだけた雰囲気で和気あいあいと歓談を楽しみました。
講座では聞けなかったパーソナルな話を本人に聞けるのが懇親会の面白いところです。
ある参加者の「どうして自社が顧客に選ばれ続けると思いますか?」との問いに、
「自分自身もまた商品の一つ。常に明るく、元気に、前向きに仕事に取り組む姿勢を忘れないようにしています」
と胸を張って答える姿が、いまでも忘れられません。
マーケターである小坂裕司氏の著書『「価格上昇」時代のマーケティング なぜ、あの会社は値上げをしても売れ続けるのか 』では、社員や社長の人となりもまた、製品やサービスの価値の一つなのだと強調しています。
札幌教材の上田社長は、まさに“「価格上昇」時代のマーケティング”を自然に実践しているのではないでしょうか。
上田社長、お忙しい中、わざわざお越しくださり、本当にありがとうございました!
参加者の声
黒板というモチーフについて、どのような変遷をたどっていたか、これからの可能性について、第一線を走るからこそのリアルなお話を聞けました。非常に興味深く、困難をチャンスに変え、正気を見出す根源的な部分にも触れることができたように思います。参加させていただきありがとうございます。
(WEBデザイナー)
実際の社会人がどう動いてるのか見れたので!!何を考えてどう発言しているのか、とてもとても勉強になりました!
(北海学園大学法学部2年)
ビジネスはコミュニケーション 上田社長のようにハキハキ、パワフルに話そうと思いました!また、もっと顧客と話してニーズを理解しようと思いました。僕は高齢者向けのお手伝いサービスやスマホ教室をやっているのですが、お金の計算ばかり最近頭にありました。もっと顧客と深く話して何が求められているのか探っていきます。
(北海道大学医学部3年)
まとめ
「黒板とは何か」を突き詰めていくと、けっきょく「書くとは何か」という深い問いに行きつくのだなと思いました。その本質的な部分を突き詰めると、黒板の価値というのは、まだまだありそうですし、それを必要とする人たちもいるに違いありません。
学校教育の世界は、少しでも板書の時間を減らして、「伝える」ことに時間を割きたいというニーズがあるはず。だからこそ、近年ではICT教育化が着々と進んでいるのではないでしょうか。字や図をチョークで書く時間を少しでも省略できれば、それだけ「伝える」ことに集中できるからです。
その意味では、黒板だけで完結する授業というのは、少々アナログすぎるため、「授業を効率化したい」というニーズを満たすのが難しくなっているかもしれません。
一方では、その黒板のアナログな部分、つまり、書くという行為のわずらわしさ、温かみなどに、かえって価値を見出す人も、かならずいるはずです。
黒板をチョークで書く。ただそれだけの行為には、まだまだ私たちが言語化できていない価値があるのではないでしょうか。
黒板には不思議な魅力があります。誰もが黒板を目の前にすると「書いてみたい」という欲求に駆られてしまいますよね。“書きたい”という本能を刺激する何かがあると思います。
チョークを持つ、チョークを走らせる、チョークの音を聞く、消す、また書く……黒板で書くという体験自体が、他では得られない独自の価値です。
こうして考えていくと、デジタル化が進めば進むほど、黒板のアナログさの価値が引き立つ領域があると思えてなりません。
私たちエレメントの使命は、製品・サービス・企業の「価値」を言語化することです。エレメントにとって価値の言語化こそ、WEBマーケティングに欠かせない原理原則です。
あなヒラ北海道に参加すると、価値を言語化する思考が洗練されていきます。あなたもぜひ、この講座に参加して、マーケティングの原理原則をものにしませんか?
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