北海道旭川市にある大熊養鶏場様は、自社ブランド卵「かっぱの健卵」を販売し、一般のお客様から小売業者や飲食店まで幅広く流通展開しています。
弊社は、大熊養鶏場様の通販サイトのマーケティング戦略を担当し、日々成果をあげるために尽力しています。
今回は、リピーターに焦点を当てた施策によって得られた売上向上の成果と、その具体的な戦略についてご紹介します。さらに、今後のリアルな課題についても公開しつつ、最後には今回の事例が皆様のケースにおいてどのように活用すべきか解説します。
ECサイトの売上向上を目指すすべての事業者の参考になれば幸いです。
また前回、大熊養鶏場様のサイト構造に関する事例も紹介していますので、こちらも参考にしてください。
【結果】リピーターがサブスクへ移行し売上が166%向上
まず、リピーターに焦点を当てた結果、売上がどのように変わったかをご紹介します。
2023年9月ごろより、ECサイトにサブスク(定期購入)の仕組みを確立し、リピーターに対してサブスクの契約を促すアプローチを増やしました。
その結果、年間の平均購入回数が4回程度だったお客様が12回(見込み)に増加。
お客様一人あたりで言えば、年間売上が3倍の増加です。
加えて、2023年10月〜12月の売上が、同年7〜9月と比べて166%増加しました。
おそらく、新規顧客への集客に集中したままではここまで劇的な変化は起き得なかったと思います。
この結果について、どのような課題から戦略をとって結果を出したかについて解説していきます。
当初抱えていた課題と現状の数字
具体的な戦略の前に、どのような課題と数字だったかをまず解説します。
購入頻度が高くないという課題
前回から大きな課題は変わらず、ECサイトの売上をどう高めるかです。
売上を伸ばすための要素をここで定義しておきます。
- 顧客数
- 顧客の購入頻度
- 顧客の購入単価
これらの組み合わせによって売上が決まります。
前回の記事でも書きましたが、コンテンツマーケティングによって新規顧客も増え、売上は伸びてきている中で、既存顧客のリピート率や購入頻度について理想の結果が得られていませんでした。現状の数字を整理しつつ、どのように高めたかについて解説していきます。
施策前のリピート率と購入頻度について
購入頻度についてリピート率なども踏まえて算出します。
ここでは、2回以上の購入はリピート率としてカウントし、1回だけの購入者はリピーターではないと定義します。
結果、リピート率は23%でした。(すみませんがさすがに実数は出せません)
つまり77%は一回の購入で終わってしまっています。
一般的にですが、ECサイトの食品におけるリピート率は40%程度と言われています。
これをそのまま比較すれば、現在の23%は低いと考えられます。
ここで、23%のリピーターの購入頻度を分析してみたところ、2回以上購入したことがある人の直近1年間の平均購入回数は3.82回(約4回)でした。
リピーターの購入頻度を3倍に高めた思考と戦略
シンプルな考えをすると、平均より低いリピート率23%をいかに40%まで高めるか。そのため新規顧客を逃さない施策を考えるのが妥当です。つまり77%の1回購入者をターゲットにするということ。
ただ、購入頻度を高める上では、既存顧客23%もターゲットにできます。
別の言い方をすれば、すでに商品の価値を実感しているリピート経験のあるお客様に対して、コミュニケーションを増やして、生涯の顧客となってもらう活動に集中するということです。
マーケティングコストにおいても、1回の購入を2回以上に増やすのか、すでに3回購入したことがある顧客に4回目の購入をしてもらうか比較すると、後者の方がコストは少なくなります。
先ほど書きましたが、23%のリピーターの購入頻度は直近1年間において平均購入回数が3.82回(約4回)。
平均4回を5回以上に増やすことができると、
顧客数 a人 × 購入金額 b円 × 購入頻度4回 = 売上4ab円
顧客数 a人 × 購入金額 b円 × 購入頻度5回 = 売上5ab円
単純計算で売上が1.25倍になります。
また、購入頻度の現実的な限界値も定義しておきます。
購入頻度を増やすとはいえ、すでに限界まで達していたら現実的に購入することは不可能です。
卵の購入頻度の限界値は、主に賞味期限の影響を受けます。大熊養鶏場様の卵は採れたてを即配送しているため賞味期限が約1ヶ月。
月に一回の購入頻度だとして年間12回購入してもらえる可能性があります。(色々例外はありますがまずは食べる当人の購入に絞って考えます)
平均4回からすれば、伸び代は年間8回。
顧客数 a人 × 購入金額 b円 × 購入頻度12回 = 売上12ab円
つまり、購入意欲の高い既存顧客に目を向けて購入頻度を最大化させることができれば、売上を3倍にすることが可能です。ここではじめて、リピーターをターゲットにすることを確定します。
具体的な4つの施策
方針が決まれば、打ち手はいくらでも出てきます。
適切なタイミングでメルマガを送り、購入機会を増やしたりすることも可能です。
一つずつ紹介します。
①サブスクページの作成と拡散
今回は商材が卵なので、現在のリピーター23%に対して、サブスク(定期便:月1回以上の配送)が最適であると判断しました。
カラーミーにてサブスクのページを作成し、メルマガやSNSなどでリピーターの方々へ発信しました。
また、発信だけではサブスクの認知の獲得が不十分なため、既存顧客が知るきっかけとして、スマートフォンでは常時サブスクへの導線を配置し、新たにサービスを開始したことが伝わるようNEWアイコンを設置しました。
②サブスク購入によるお客様の価値を具体的に訴求する
また、サブスクの購入を後押しするオファーとして、通常価格より5%の割引を加えたことで、年間10回程度購入してくれていた人は喜んで契約してくれました。
さらに、その際にお客様から直接お聞きしたこととして、「スーパーで買った卵は持って帰るときに割れる心配がある」という声をいただき、それを伝えるページへの改良もすることができました。
コミュニケーションが増えたことで、顧客の満足をこちらが確認できた瞬間でした。
③サブスクの案内を入れたチラシを商品へ同梱
ページの作成や発信だけでは、情報が届かない可能性を考えて、ダメ押しでサブスクの案内を載せたチラシを封入することにしました。
このチラシ作成時には、これから食べてくれる方へ「かっぱの健卵」の価値をできる限り伝えることも念頭におき、商品価値を説明も加えました。
これらのリピーターに向けた施策と、一部直接の電話なども駆使して、サブスクの案内を実施しました。愚直な戦術です。
これによりサブスクの案内後、リピーターのうち約25%(2024/5月現在)がサブスクの契約をしてくれました。
これだけで、顧客あたりの売上が約3倍に増えたことになります。
④さらにSEOによるサブスクへの流入増加
加えて、SEO対策として、キーワード「卵 定期便」「卵 サブスク」などで上位表示を獲得できるようにページを改良し、解説コンテンツも充実させました。
これによって嬉しい誤算として、これまで購入したことのない新規顧客がサブスクからの契約をしてくれるようになりました。
最終的な売上の変化
これらの施策によって少しずつお客様がサブスクへ移行し、年間の平均購入回数がまばらだったお客様が12回(見込み)へと増加しました。
一人一人のお客様の売上が大きいと3倍まで増加しています。
総じて、冒頭に記載した通り、2023年10月〜12月の売上が、施策前の同年7〜9月と比べて166%増加するに至りました。
マーケティング活動をするにあたって、大々的な戦略や戦術を練らずとも、現在ある情報や、今いるお客様などに目を向ければ売上をあげることも可能だという事例となりました。
番外編:売上をさらに伸ばすためには
大熊養鶏場様も、まだまだ改善点を抱えていますが、上述の思考を持って取り組んでいけば顧客に対して最適なコミュニケーションを提供し、貢献していけると確信しています。
今後の課題としては、リピーター23%のサブスク移行率をほぼ100%まで達成させること。
また顧客数について、継続的にコンテンツマーケティングを行い、顧客ニーズに合わせたコンテンツやサイトの情報を磨いていくところです。
さらに、卵という商品を活用するシーンを、いかに魅力的に顧客に伝えることができるかが課題です。これは時代の変化とともに変わるため、常に消費者理解は必要で、終わりのない課題です。
ただ、消費者理解についても、今回の施策が有効に働きます。サブスクに移行してくれたようなロイヤルカスタマー(売上に貢献し、ブランドへの信頼がある人)とのコミュニケーションが増えることで、どのような価値があるかをヒアリングする機会も増やすことが可能になります。
例えば、「なぜ購入してくれて」、「何がよかったのか」、「なぜ他のブランドへ離反しないのか」など、関係が深まることで多くのことを聞く機会は増えます。
1人1人の顧客から売上が生まれることを軸にマーケティング活動を進めて、大熊養鶏場様の卵がお客様の活用シーンにどれだけ貢献できるかを追求していきます。
これから取り組む皆様へのアイデア
今回の事例は卵の通販でした。日常生活で使用頻度の高い商品においては、既存顧客に対して同様のアプローチが有効です。
パンや牛乳、ダイエット食品、サプリメントなどは、既存顧客がいれば、その人たちに目を向けてみてください。このような継続することで顧客の生活の質が高まるものはすべて対象となり得ます。
そのため、本記事の事例にちなんで皆様へお伝えすることはシンプルですが、複数回購入したことがある顧客に対して、継続することの価値を伝えること、そして継続へのサポートを最大限してあげることが大切です。
また、購入頻度が高くない商品であっても、その商品サービスに絶対の自信があるのであれば、利用者のシーンを徹底的に想像し、利用頻度を高めることでどのような顧客価値があるかを考えてみましょう。
その価値のために、定期的に購入してもらう必要があることを伝えることができれば、可能性は広がると思います。
まとめ
今回は大熊養鶏場様の事例をもとに、売上を作る要素の中でも購入頻度に的を絞った思考や打ち手を解説しました。
既存顧客の中でも、複数回の購入経験のある顧客に絞って購入頻度を高めることは、打ち手としては難易度が低く、成果をあげやすいと思います。
今回の事例が皆様に少しでも気づきやアクションに繋げられることがあれば幸いです。
また、EC運営について、マーケティング戦略の立案や実行について少しでも聞いてみたいことがあれば、弊社の無料相談をご活用ください。
記事では伝えきれない、相談者様に合わせた具体的な話ができると思います。ちょっとの気づきから大きな成果を生む行動ができることを私も常々実感しているので、目の前の成果に悩んでいればアクションしてみてください。
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