「何のために事業をやっているのですか?」と訊かれたら、あなたはどう答えますか。多くの経営者は「利益こそ会社の目的だ」と答えるかもしれませんね。
しかし今回紹介するメガネ店「千里堂」は、「メガネを売ることではなく、顧客への貢献が事業の目的だ」と自信をもって答えるでしょう。事実、たとえ相手がメガネを買わないとしても、全身全霊で最高のサービスを提供し、結果としてたくさんのファンを獲得してきました。
この記事では、千里堂メガネのめざましい躍進を間近で目撃してきたWEBディレクターの石山が、「貢献」と「パーパス」をキーワードに、「利益ではなく、貢献を追求すると、あとから結果がついてくる」というテーマについて論じます。
「メガネっ子をゼロにする」を使命とする千里堂メガネ
(1)「本当はメガネをかけたい人なんて、いないのでは?」という疑問
千里堂メガネは、「近くを見るときの負担を軽減するメガネ」を提案し、顧客の視力低下を防いだり、改善に導いたりしています。「メガネを売ることではなく、裸眼で生活できるように目をサポートすることが目的」と考える、ちょっと変わったメガネ店です。
結果として千里堂は、競合他社とはまったく違う独自路線を開拓し、いまでは3カ月先まで予約がいっぱいになる、超人気店へと成長しました。
メガネを売るのではなく、メガネがなくても快適に過ごせる生活をサポートする――どうして千里堂は、このような考え方に至ったのでしょう?
当時、メガネ業界は安売り系のチェーン店が続々と登場し、市場を席捲していました。いうなればメガネの“叩き売り”状態です。
安売りに舵取りするべきか? それとも高品質・高価格路線に特化すべきか?
千里堂は葛藤しました。
「メガネは安ければ安いほどいい」「高いメガネも安いメガネも同じではないか」と考える人々が増えていくなかで、千里堂はどんな顧客価値を生み出すべきなのか?
やがて千里堂は、マーケティングの金言「顧客はドリルではなく穴がほしい」という言葉について深く考えるようになりました。
そうだ、顧客はメガネをかけたくてかけているのではない。本当はかけたくないが、メガネを使わざるを得ない状態だからメガネを買っているのだ。
世の中からメガネっ子をゼロにしたい。
千里堂の核心となるコンセプトが生まれた瞬間です。
(2)「無料測定だからこそ全力を尽くします」
いまでは口コミが口コミを呼び、紹介の絶えないメガネ店へと成長した千里堂。北海道の人気ローカル番組「イチオシ‼」での特集が大反響を呼び、なんと再放送までされました。
千里堂網走本店の一級眼鏡作製技能士・増子隼人さんは、これまで数えきれないほどのお客さんの視力測定を経験し、一人ひとりに合うメガネを提案してきました。
そんな増子さんには、譲れない信念がありました。それが「無料測定に来てくれたお客様だからこそ、持てる知識と経験のすべてを惜しみなくそそぐ」というものです。
無料測定に興味を持って来てくれた方は、実際にメガネを購入されないかもしれない。それでも増子さんは全力を注ぐべきだという。なぜでしょうか。実際にインタビューをして理由を訊いてみました。
「一人でも多くの方に、自分の目のことを知ってもらう、向き合ってもらうことが千里堂の「貢献」です。それは、メガネを買っていただく以上に大切なことだと考えています。無料測定に来てくれた方は、自分の目に関心をもってくれた方ですから、その方に全力を尽くすのは、千里堂の使命を果たすことと同義なのです」
無料測定に来てくれた人が、けっしてメガネ購入につながるわけではない。「だからこそ全力を尽くすべきだ」と増子さんは力強く語ります。
そんな増子さんの姿勢から、「千里堂としてどうあるべきか」という貢献意識がひしひしと伝わってきます。
(3)貢献に始まり貢献に終わる姿勢がお客さんの心を掴む!
千里堂は、メガネを売ること以上に、顧客一人ひとりに、自分の目をいたわることや視力を守る取り組みの大切さを伝えていくことが大切だと考えています。そんな千里堂はいま、事業としても大きな成果を挙げています。
なぜここまで成長できたのか? 千里堂の事業は、「貢献」からスタートし、「貢献」に終わるという一貫性があります。ヒントは、やはりその姿勢にあるのかもしれません。
「本当はメガネを買うつもりはなかったのだが、いま買うことにした」「冷やかすつもりで来ていたが、考え方が180度変わった」「これまでのメガネづくりの常識が覆った」といった声が実際に寄せられています。
このように、真摯な姿勢に感激した顧客が続々とファンになっていることが何よりの証左でしょう。
貢献意識を組織に根付かせるにはどうする?
成果をあげるためには、貢献に焦点を合わせなければならない。手元の仕事から顔をあげ、目標に目を向けなければならない。「組織の成果に影響を与える貢献は何か」を自らに問わなければならない。すなわち、自らの責任を中心に据えなければならない。
ピーター・F・ドラッカー『プロフェッショナルの条件』
千里堂の事例から、わたしたちは「スタッフ一人ひとりが貢献意識を持った組織が成果をあげる」ということを学びとれます。ではどうやって貢献意識を組織に根付かせるのでしょうか?
(1)事業のパーパスをしっかり定める
ここで重要なキーワードが「パーパス」(purpose)です。
企業経営におけるパーパスとは、組織の存在理由のこと。企業経営のパーパスには、「常に実現に向けて努力する目標であること」「決して実現されることはない目標であること」という、一見すると相反する2つの要素が含まれているのが特徴です。
つまりパーパスとは、“普遍的な価値を持つ(目指すべき)一番星”。たとえばスティーブ・ジョブズは、パーパスについて「重要なのは、そこに向かって努力し続けることだ」と語っています。
ちなみに、「ミッション」「ビジョン」「バリュー」と何が違うの?と思った方は、以下の記事が参考になります。
(2)パーパスが組織に必要な理由
千里堂の実例を参考にしつつ、パーパスが組織にもたらす効用について整理しながら、パーパスが経営に不可欠である理由をみていきましょう。
①スタッフの視座があがり連帯感が生まれる
パーパスという一番星が明確であれば、スタッフみんなの視座が高まり、「いま自分は何のために仕事をしているのか」がハッキリします。仕事一つひとつに対する意識が変わり、意思決定の質が高まります。
②スタッフの主体性が育つ
パーパスは「どんな事業で顧客価値に貢献するか」を明文化したものです。目指すべきパーパスから逆算すれば、どんな仕事をすれば顧客に貢献できるかを、自分たちで考えられるようになる。
③顧客起点の経営判断ができる
なぜ「利益」ではなく「パーパス」を追求すべきなのか。
利益を事業の目的にすると、顧客が置いてけぼりになり、だんだんと市場ニーズからずれていきます。顧客よりも組織の都合(儲け)が優先になるためです。
市場ニーズからズレた事業は顧客に必要とされないので利益を生み出せなくなります。利益が生まれないからスタッフのことを大切にできなくなって……。
これは組織崩壊の典型的な筋書です。千里堂がそうであったように、パーパスを追求する組織は、ゴールを「カネ」ではなく、「顧客への貢献」に見出します。経営者の目線、意思決定の根幹が常に「顧客起点」であるためにも、パーパスは不可欠です。
パーパスは、社長室の額縁に飾られて顧みられなくなるようなものではなく、経営者とスタッフが、行動として示せるものでなければならないのです。
パーパスのつくりかた
ジム・コリンズの名著『ビジョナリーカンパニー・ZERO』から、パーパスをつくる方法をコンパクトにまとめました。
①まずは会社としてやりたいこと、「このために会社をやるんだ」と言えるものを言語化する。
(例:パタゴニア)「私たちはアウトドアブランドを作る」
②続いて「なぜそれをやるのが重要なのか」という疑問を投げかけて、答えを言語化する。
(例:パタゴニア)「それが私たちの一番得意なことであり、好きなことであるからだ」
③その答えをさらに「なぜその理由が重要なのか」を問いかけて言語化する。
(例:パタゴニア)「得意で好きなことだからこそ、消費者が十分な対価を支払ってくれるような革新的で高品質な製品が作れるからだ」
④最後に、最初に考えた会社の存在理由から、「なぜ」を5回繰り返す。そこで出てくるものがパーパスとなりうる。
(例:パタゴニア)「私たちが存在する究極の目的は、社会変革のロールモデルとなり、手段になることだ。それを成し遂げる唯一の方法は、産業界からロールモデルと目されるような財務の健全性と十分な成功を手に入れることだ」
パーパスは“つくる”のではなく“見つける”もの!
「自分の会社にはパーパスなんて……」と思う方もいるかもしれません。しかしパーパスは、ゼロからつくるのではなく、創業時の想い・自社の強み・社風・顧客から支持されている理由――などの、会社を構成する“文化”の中から見つけるものです。
しかし多くの経営者は、日々の仕事に追われるなかで、パーパスについてじっくり考える余裕がないかもしれません。「そもそも、そんなことを考えたこともなかった」という人もいると思います。
実際、エレメントも、これまでたくさんの素晴らしい経営者と出会ってきましたが、パーパス(あるいはそれに準じる概念)を大真面目に考えたことはないという人が大多数でした。
パーパスは、事業が岐路に立たされたときにこそ、重要性が増します。どんな大嵐のときでも、正しい進路を導いてくれる灯台のような輝きを放つのです。
たとえば千里堂が、低価格路線か高価格路線かの選択に迫られたとき、「裸眼生活を目指すメガネ」という答えを導き出したように。
第三者から言われてパーパスに気づくこともある
パーパスのヒントは、すでに自社の中にある――とはいっても、なかなか見つけ出せないのが現実です。
そもそも会社は、自分たちの事業においてプロフェッショナルであるがゆえに、自社を俯瞰できなくなってしまうことが多いです。
自分たちが強みだと思っていたことが、実は強みでなかったり、当たり前すぎて陳腐だと思っていたことが、顧客にとっては大きな価値だったりします。
そんな中で、パーパスを自分たちだけで見つけるのは、かなり難しいことです。しかし、社員やアルバイト、顧客からの何気ない一言で、ハッと気づかされることも珍しくはありません。
「そうだ、自分たちはこのために仕事をやっているのだ」と、当たり前すぎて気づけなかった大切なこと、すなわち事業の原点に立ち返ることもあります。
パーパスを見つけられず、迷ったときは、創業者に設立当時のことを聞いたり、いつも買ってくれる顧客に聞いたり、ときにはまったく関係のない人に会社のことを話してみたりしてみてはいかがでしょうか。
エレメントは経営者の伴走者となって一番星を目指すWEBマーケティング会社
わたしたちエレメントは、WEBマーケティングでクライアントの集客サポートを行う会社です。単なるWEB広告ではなく、クライアントの会社に一生残り続ける“資産”を生み出すブログコンテンツを作成し、集客で成果を出しています。
ブログコンテンツをつくるために、クライアントと何度もセッションを行い、会社の歴史・想い・自社の独自性について話し合う。そのやり取りは、パーパスについて深く考える機会にもなります。
「指示待ち社員が多くて困っているが、どうすれば改善できるのかわからない」
「既存事業だけでは限界を感じているが、これからどんな事業に舵取りをすればいいのかわからない」
「会社を継いだものの、未来が不明瞭で先行きが不安」
このようなお悩みを持っている方は、ぜひ一度、“パーパス支援会社”のエレメントにご相談ください。もちろんWEB集客に関するお問い合わせも大歓迎です。相談は無料ですので、ぜひお気軽にどうぞ。
「実際にどんな成果をあげているのか」「エレメントがどのようにクライアントと伴走しているのか」を知りたい方は、以下の事例をご覧ください。
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