食品業界で店舗集客のみをメインとしていた企業が、ECサイトを始めて新たな売上を獲得するケースが年々増えてきています。
また、コロナ渦によって店舗売上に悩む企業がECサイト(通販)運営を始めたりと、複数の要因で非常に多くなっています。
今回はその中でも、食品業界におけるECの現状と、食品ECで成功するために重要な施策を、成功事例を交えてお伝えします。
食品ECの現状を数字で確認
食品業界においてこれからECサイトを開設、またはすでに運営されている方にもまず知っていただきたい数字は、市場規模から見る業界の伸びしろとEC化率です。経済産業省などのデータを元に解説します。
食品ECの需要・伸びしろ
下の図は経済産業省がまとめたデータです。
食品ECの市場規模は年々伸びており、2014年から2021年を比較すると、211%上昇しています。
EC市場規模 | EC化率 | |
---|---|---|
2014年 | 1兆1,915億円 | 1.89% |
2015年 | 1兆3,162億円 | 2.03% |
2016年 | 1兆4,503億円 | 2.25% |
2017年 | 1兆5,579億円 | 2.41% |
2018年 | 1兆6,919億円 | 2.64% |
2019年 | 1兆8,233億円 | 2.89% |
2020年 | 2兆2,086億円 | 3.31% |
2021年 | 2兆5,199億円 | 3.77% |
イオンの楽宅便や、Amazon、楽天なども食品を扱っており、消費者の身近にECサイトが増えてきたことで活用する人が年々増えています。
楽天の食品分野の出店数だけを見ても、2018年には586店舗だったのが、2021年には1259店舗にまで増えています。
売上高についても上記に比例し、大手ECモールや大手スーパーの伸び率が非常に高いため、これらが市場規模拡大を牽引していると推察されます。
コロナ渦で外出自粛が増えたことで非接触ニーズが高まり、食品においてもECサイトで購入を済ませる人も増えてきています。今後は大手のみならず、自社ECの参入も加速すると予想できます。
食品業界のEC化率
次に食品を扱う企業のEC化率です。
下記データによると、2020年の「食品・飲料・お酒」業界におけるEC化率は3.31%で、他の業界に比べてかなり低いことがわかります。
生活家電や書籍分野は40%前後がEC化を進めていることを考えると、食品業界についてはEC参入の障壁があることがわかります。
- どこでもすぐ買えるから利便性がそこまで高くない
- 必ず比較する鮮度や大きさを確認できない
- 保存方法への配慮などランニングコストがかかる
などが挙げられます。
ただ、先ほどの市場規模を見ると、生活家電や衣類と同等に非常に大きいため、伸びしろがある業界だと言えます。
また、最近ではコロナウイルスの影響も減ってきてはいるものの、人との接触を避けながら購入できるECサイトはメリットも大きいです。
今後食品業界もEC化が徐々に進むと考えられますが、まず現状の数字からEC化率が低い要因を解説します。
食品業界のEC化への3つの課題
食品業界のEC化率が低い要因は主に下記があります。
- どこでもすぐ買えるから利便性がそこまで高くない
- 必ず比較する鮮度や大きさを確認できない
- 保存方法への配慮などランニングコストがかかる
それぞれ詳しく解説します。
課題①どこでもすぐ買えるから利便性が高くない
ECサイトを活用するのは利便性の高さからです。服や家電を購入するとなると、特定の店舗まで行く時間がかかりますが、通販で自宅まで届けてくれるとなると、利便性の高さにメリットを感じます。
食品も同様のことが言えますが、食品を購入するスーパーやコンビニの店舗数は非常に多く、仕事の帰りに立ち寄って購入ができたり、自宅からも徒歩圏内にコンビニがある人は多いでしょう。
また、夕食の食材はその日に買う家庭だと、ECサイトを活用することは限りなく少ないのではないでしょうか。
ECサイトと比べても店舗の利便性が非常に高いため、消費者の行動に合わせた商品提供スタイルを模索することが重要です。
課題②必ず比較する鮮度や大きさを確認できない
スーパーで魚や肉などを買う際には、できる限り鮮度が良さそうな商品を選ぶと思います。
また、野菜であればg数ではなく、個数単位で値段が付いていることも多いので、できる限り大きく量のあるものを選びたくなりますよね。
しかし、ECサイトだと鮮度や大きさが分からないため、購入の決め手となる情報が不明瞭になっています。
下記は、食品ECにおいて、消費者が求めることを調査した内容です。
これによると、「生産者や商品の情報をもっと提供してほしい」人が34.7%と一番多いことがわかります。
店舗と違って消費者に選択の余地がない分、購入した商品の鮮度が悪いと思われてしまうと、リピートされる確率は限りなくゼロに近いでしょう。
鮮度を重視する食材はもちろんですが、菓子類や飲料においても、自社のオリジナル商品であれば消費者の安心を獲得するために徹底的に情報を提供することが重要です。
課題③ランニングコストがかかる
冷蔵、冷凍食品など保存方法の違う食品を扱っている場合、維持管理に費用がかかります。
また、冷凍と言えど食品には期限があるので、廃棄による損失が出ないように常に在庫管理をしっかり行う必要があります。
加えて、冷蔵と冷凍では配送方法も変わるため、顧客の商品選択によって物流も最適化していく必要があります。
設備費や人件費が割かれる要素も多くなる点を考慮し、在庫管理のしやすさからまずは主力商品のみの展開であったりなど、戦略を練る必要があります。
食品ECの成功事例2選
EC化の課題はありますが、成功している企業から学ぶことが重要です。
下記では、食品ECで成功している企業を紹介します。
事例①ミールキットのサブスク化:ハローフレッシュ
HelloFresh (ハローフレッシュ) は、ドイツ発のサブスクリプション型ミールキット宅配サービスです。世界No1のミールキットで、累計販売食数は約10億食(2021年時点)、利用者数は720万人(2021年時点)と人気のサービスです。
また、2022年4月19日(火)に日本上陸し、利用者数は今後増えてくると思われます。
HelloFreshからはサービスの面で非常に学ぶことが多いです。
ミールキットとは、食材に加え、レシピが同封されて宅配してくれるサービス。
「課題①どこでもすぐ買えるから利便性が高くない」という課題にもあった利便性の問題に踏み込んだ好例です。
「スーパーですぐ買えるからネットで買う必要がない」と考える人が多い中で、献立と必要食材をセットで提供してくれるところに、スーパーでは成し得ない利便性の高さを感じます。
献立を考えてスーパーに食材を買いに行く時間を短縮できる最大のメリットもありつつ、さらにメニューが豊富で、毎週届いても飽きない。加えて、サブスク化して注文の手間すら解消している点などが非常に優れたサービスです。
基本自動で済むサービスですが、選択の余地も残っており、宅配の頻度や量も自由に選べるので、週の何日かをミールキットにしたりなど、始めやすいのが特徴です。
HelloFreshから学ぶべきは、ECサイトの活用のしやすさ、品揃え、入会費や契約期間などがない柔軟なサブスクリプション、クーポンの表示箇所、リピーターを考えたサービスなどです。
事例②卵の定期販売:大熊養鶏場
大熊養鶏場は、北海道旭川にある養鶏場で、卵を通販しています。
弊社がECサイト運営をサポートさせていただいている企業様ですが、大熊養鶏場の成功要因としては、ECサイトの構造を見直したことによる集客数の大幅改善です。
SEOで非常に重要なE-E-A-T(Experience:経験、Expertise:専門性、Authoritativeness:権威性、 Trustworthiness:信頼性)を考慮し改善を行った結果、売上が運営開始前の3.5倍程度になりました。
大熊養鶏場は、当初ECサイトに集客する土台が整っていませんでした。
まず自社ECを成功させるためには認知度をあげる必要があり、集客を徹底的に行っています。卵に関する消費者の悩みに向き合い、情報を発信することで徐々に認知度が高まります。
集客に加えて同時に必要なことが、Googleなどの検索エンジンに適したサイト構造です。信頼を得るための運営者情報であったり、扱っている商品情報の濃さ、商品ページの使いやすさなど多岐にわたりますが、それらの基本を整えた土台の上で、情報発信することで集客数アップに繋がりやすくなります。
注意していただきたいのが、見方を変えると、どんなに素晴らしい情報であっても、信頼性のないサイトの上で発信されていれば検索上位にはならず集客ができないということです。
サイト構造の見直しによる集客アップについては、下記で詳しく解説しています。
すでにECサイトを運営されていて集客に悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
食品ECを成功させるために重要なこと
成功事例や課題を踏まえて、食品ECで成功するために重要なことは、
- サービスの設計
- 主力商品のみで小さく始める
- ECサイトの構造を最適化
それぞれ解説します。
サービスの設計
成功事例からもわかるように、サイトを作るだけではなく、活用する消費者をイメージしたわかりやすいサイト構造とサービス提供が重要です。
業界、業種による違いがありますが、基本を抑えるには自社が提供する商品の競合を調べることです。
similarwebは、無料で使える競合サイトを調べるのに便利なサイトです。
競合サイトのURLを1つ入力すると、入力したサイトと競合するサイトが複数出てきます。
細かな使い方は、「シミラーウェブ 使い方」などで記事がたくさん出てくると思います。
ここで競合を調べて、そのサイトが提供しているサービスを調べましょう。
商品数や定期販売のサイクル、送料設定、送料無料となる金額設定など、真似できる部分は取り入れて最短で土台を整えましょう。
主力商品のみで小さく始める
事業拡大のために大きく始めたのは良いものの、失敗してしまい会社が潰れてしまっては本末転倒です。現在店舗集客をしていて主力商品があるのであれば、それをメインとして小さく始めることも戦略のうちです。
商品数を多く展開すると、その分サイト制作に時間がかかり(外注すれば数十万~数百万)、さらに売れない時期が続くと赤字が続きます。
ECサイトは無料で始められるサービスも多く、それらだと商品数も限りがあるため、まずは小さく始めて、サイトの集客数が伸びて商品が売れるようになってきたら徐々に広く展開していくのもおすすめです。
ECサイトの構造を最適化
自社ECサイトは作成するだけでは集客ができません。認知度を高めるために情報発信をしてサイトへの訪問者数を増やす必要があります。
ブログを起点にした場合、SEO対策が必須になりますが、事例でもお伝えした通り、サイト構造を検索エンジンに適した作りにする必要があります。
現在のブログ発信の主流はWordPressを活用した構造のため、ECサイトを構築して自社でブログを書いて集客をしたいと考えている場合は、WordPressがおすすめです。すでに運用されていて、サイト構造が不安な場合は事例でもお伝えした下記記事が参考になりますので、参考にしてください。
まとめ
今回は食品ECの現状の数字と、課題、成功事例を解説しました。
食品EC化率は低いものの、市場規模を考えるとこれから加速的にECサイトが増えていくと思われます。
- どこでもすぐ買えるから利便性がそこまで高くない
- 必ず比較する鮮度や大きさを確認できない
- 保存方法への配慮などランニングコストがかかる
- サイト活用のサービスの徹底
- サイト構造の最適化
- 情報を発信し、認知度を上げる
食品ECサイトの運用に少しでも参考になればと思います。
また、弊社では食品ECサイトのマーケティングサポートをさせていただいており、ブログの制作代行を行って集客数アップ、売り上げアップに繋がる施策を行わせていただいております。
ECサイトの構築や、ブログで集客する方法にお悩みの方は、無料相談もお受けしておりますので、お気軽にご相談ください。
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